——今の仕事をされるまでの経緯を教えてください。
大学卒業後リクルートに入社して、最初はリクルートリサーチに配属されました。そこで缶コーヒーや清涼飲料水といった、よくテレビCMでやっているような消費財のマーケティングリサーチをしていました。この間15年、一番安いもので缶コーヒー、高いものはニュータウンまでありとあらゆる商品のお手伝いをしました。その後、2004年に結婚情報誌のゼクシィに異動し、ゼクシィという媒体のマーケティングを担当しました。そのあと、2005年に人事異動でリクルート住宅総研に配属になったのですが、もちろん住宅業界のことは詳しくないですし、不動産も、ましてや建築も知りませんでした。だから異動して初めて会社に提出しなければならないレポートには困りましたね。お題は『2010年、2015年の住宅市場に対するビジョン』というもので、どうしようかと本当に悩みました。その時ゼクシィの経験が生きてきたんですよね。ゼクシィの対象者って20代後半から30代の女性が中心なので、その世代の価値観は、団塊世代やバブル世代など上の世代とはずいぶん違うなと思っていました。そこで、『ポスト団塊ジュニア考』というものを書いたんです。今の30歳前後の人の価値観を調べて、この世代が家を買う頃には、今までの住宅マーケットのやり方は通用しないよね、ということを書いたんです。それから少しずつ仕事をやっていくうちに、日本の住宅市場はなんか変だぞと、社会的な意識を持つようになりました。
——世代の違いによる家に対する捉え方の変化を教えてください。
インタビューやアンケートをすると、上の世代も今の20~30歳代も「持ち家を持ちたい」という思いは変わっていません。ただ、持ち家に対する考え方がずいぶん変わってきたなと思います。これまでは、持ち家を持つことそのものが目的で、ステータスであった時代が長かったんですよね。それが、ポスト団塊ジュニア世代になると、家を持つことは目的ではなく手段になっている。社会が複雑さを増して、先行きは不透明で、確かなものが何一つ見いだせなくなっている状況の中で、自分のアイデンティティを固定させる場として家族が占める位置が大きくなっています。ところが、その家族も昔ほど安定的な関係ではなくなっていて、結婚をすれば家族になれた時代から、コミュニケーションで絶えず絆を確認し続けないといけない「家族をする」時代になったんです。そこで、とても大切だけど壊れやすい家族にとって確かな場所として持ち家が求められているんです。「家族の関係性を可視化する装置」と僕は言っているのですが、今の若い世代にとって、家とはそういう存在になってきているんですね。それから、家を買ったらゴールではなく、買って10年住んだ後、その家を貸して次はどうするかとか、売って次はどうするかという【出口】を考える人が出てきています。昔は、住宅双六と言って、最初にアパートを借りて、次にマンションを買って、それから庭付きの一戸建てを買って上がりという1つの大きなコースにみんなが乗って家を選んでいたんです。歳を重ねるに従って自分の給料も上がるし、経済成長で地価も上がっていったので、庭付き一戸建てというゴールに向かってステップアップしていくということができたからなんですよね。でも、バブルが崩壊して値上がりが期待できなくなった頃から、永住型マンションというものが注目されるようになって、一次取得層が永住するつもりでそれを買うようになったのがこの20年くらいです。自分の人生において、老後まで安定したコースが見えているのだったら永住型でもいいのかもしれないですが、今はそこにリアリティがない時代なんです。そうしたら、いざとなったら売れるとか貸せるという【出口】を考えるし、それができないといけない。後で言いますけど、現状の住宅市場ではなかなかそれができないんです。

















